4章 組織のコンテキスト

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この章では、幹部経営者の役割に焦点が当てられている。組織が受けるリスク要因を深く配慮し、チャレンジすべき発展の機会は何かを探索することが確実に出来る品質マネジメントシステムを理解し、構築し、運用することが求められている。品質マネジメントシステムは後で述べることにして、ここでは上の図で示された4.1項から4.3項までについて解説する。

外資系企業に勤務していた現役時代、社長は次ぎつぎに変わり米国人だった。新しい社長は、日本での会社がどうような状況にあるのかを知るために各部門の日本人管理職からいろいろな情報を集めていた。今から思うと、ここでの「組織のコンテキスト(文脈・背景)」を明確にしたかったのだろう。

「組織のコンテキスト」の定義は、「ビジネス環境。製品、サービス、また投資と利害関係者への組織の取り組み(アプローチ)に影響を及ぼすかもしれない内部的および外部的な要因の組み合わせ(コンビネーション)」である。そして、注記2では、「英語でのこの概念は、ビジネス環境、組織的な環境、組織のエコシステム(生態系)など異なった文言でしばしば表現されている。個人的には「ビジネスを取り巻く環境」が理解しやすい。

規格の「組織とそのコンテキストを理解する(4.1項)」である。規格の要求事項は以下である。


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組織を取り巻く外部と内部の環境を知らずに組織を運営することはあり得ないから、幹部経営者たちは必ず行っている。中堅企業や上場企業ならば株主総会でこれらを株主に報告している。でなければ、経営者として生き残れないはずである。なお、品質マネジメントシステムにはほとんどすべての部門が対象となり、直接的に関わらない部門は財務ぐらいであろう。これを受けて、規格は、「利害関係者のニーズと期待の理解(4.2項)」を下のように要求している。


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顧客、従業員、外部供給者、株主、地域社会などが利害関係者となる組織が多いはずだ。品質面で問題のない製品を一貫して顧客に提供するためには、彼らの要求や要望を無視しては不可能である。品質マネジメントシステムの意図は、これらの要求と要望を満たすことでもある。そこで規格は、「品質マネジメントシステムの適用範囲の明確化(4.3項)」を以下のように定めている。


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規格の適用を除外することができることがここで明確になった。ただし、除外するには正当な理由が求められているのは当然である。この件に関してはいろいろな噂があったが、このような結論になったのは、サービス業界からの強い要望があったからであろう。なお、CD案の時には、7.1.4項(検査測定機器)と8章が除外の対象になっていたが、DISではこれがなくなり、規格の要求事項はすべて対象となるような誤解が生まれる。CD案での限定が正しい解釈と思う。それ以外を除外するための合理的な理由を作ることはまず不可能なからである。

これらの要求事項を満たすための”組織のコンテキスト”は、この書式にまとめることができる。