ISO/DIS9001:2015のシステムモデル

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次期規格で採用されたシステムモデルがこれである。CD規格案では提示されていなかった。規格作成のTC176委員会議長は、この図を根拠にして、次期規格にもプロセスアプローチが採用されたと主張していた。支援プロセスが追加されているために、実際のビジネスプロセスに適用し効果を上げることが期待できる。なお、除外事項を検討するとしていたCD規格案だったが、今回の改訂では除外事項は認めていない。したがって、組織は、その規模や業種に関係なくすべての要求事項を満たす品質マネジメントシステムを構築し、実践しなければならない。

今回の改訂によって新しく取り入れられたのは、「リスクベースの思考(risk-based thinking)」である。この思考法が規格の全般に亘って求められている。ただし、リスクマネジメントの取り組みは組織によってそれぞれ異なることは許容されるような要求事項である。リスクマネジメントの国際規格としてISO31000があるが、大がかりに取り組む必要がある組織ならばこれを採用する選択肢もある。しかし、それほどのリスク管理が求められないならば、改訂規格での要求を満たすことでもよいと思われる。リスクベースの思考に関する資料は、ISOが公表している。スライドをダウンロードして閲覧されたい。

継続的改善(continual improvement)は、annex SLでは改善のみなのだが、あえて現行規格の文言を残した。今後、本ホームページでは次期規格の解説を掲載する予定にしている。

今回の改訂のもう一つの特徴は、他のマネジメントシステムとの統合を容易にするために、今後の国際規格での採用が必須となる共通用語と規格構成である「上位の規格構成(Annex SL)」を採用したことである。その結果、次項のような規格の構成となった。すなわち、

  • 組織の文脈・背景、組織の品質マネジメントシステム、およびプロセスの理解(4章)
  • リーダーシップ、方針および責任(5章)
  • リスクと機会の計画作成と考慮するためのプロセス(6章)
  • 資源、人々、および情報を含む支援に関するプロセス(7章)
  • 顧客および製品とサービスの関わる運用面でのプロセス(8章)
  • パーフォマンスの評価のためのプロセス(9章)
  • 改善のためのプロセス(10章)

しかしながら、規格で明確に指摘されているように、規格の章立て通りに組み立てた品質マネジメントシステムを構築する必要は全くない。規格の0.3から0.5までに記述されたプロセスアプローチを踏襲することが推奨されていることを認識すべきである。