インフラストラクチャー

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ISO9000:2005での定義によると、組織の恒久的な施設と設備がインフラストラクチャーであり、さらには組織の成長と機能面に欠かせない施設、設備、サービスおよび機械器具が含まれる。すなわち、規格に示されたような、建物、電気、ガス、水道や電話通信などユーティリティを意味する。建物には、種々のものが含まれる、たとえば、事務室、家具、コンピュータ、通信連絡網、食堂、医務室、試験室、工場、機械などである。敷地に接する道路や輸送手段(鉄道、バスなど)も範疇に入る。これで分かるように、組織が業務を運営する上で必要な財務的資源、人的資源および消耗品以外のすべてが含まれる。これらのほとんどは固定資産として記録されているはずである。

規格の要求事項は、「製品とサービスの適合性を確保するためのプロセスを運用するために」求められるインフラストラクチャーは何かを明らかにし、提供することとしている。どのようなインフラストラクチャーなのかは経営者や管理職なら誰でも知っているから問題ない。しかし、”提供する”とは何を意味するのだろうか。建物を建設したり、設備を購入することだが、それを実現するには資金が必要になる。資金調達がいつでもできるならばよいが、できないときには設備投資を先送りすることもがよくある。これでは、適切なタイミングで適切な設備投資ができない。だから、資金確保の計画作成を行い、インフラストラクチャーを提供することが肝要となる。”出たとこ勝負”で設備投資を行うことによるリスクを回避することがこの要求事項だと言いたい。

では、”維持する”とは何か? 製品とサービスの生産や提供を効率的に継続するための工場や設備を維持することは、通常的に行われているから問題ない。しかし、人的な誤操作や自然災害によって生産能力やサービス提供が不可能になるときには、復旧作業が必要なる。日本では自然災害によって幾度も被害が発生している。火災やガス爆発による操業停止も頻繁に発生している。このような突発的な事故に速やかに対応するための緊急対策ができているならばよいが、なければ事業再開は大幅に遅れ、下手をすると事業を継続することができなくなることもあり得る。このような不幸を回避するためには、リスク評価を行い、緊急対策の必要性を明確にすることからはじめて、必要と判断した緊急対策を設定することが必要となる。

川崎市に今もある製油所(かつての系列子会社)の火災事故のついての逸話を紹介しよう。火災発生を中継しているテレビで見ている工場長は、自宅で昼食をとっていた。奥さん曰く「早く会社に行かないとだめでしょう」工場長曰く「大丈夫。しばらく食べられないからしっかり食べてから行く。工場には、緊急対策のためのマニュアルがあるから、それを順番にきちんとやればすむから慌てることはない」。

製造業の場合には、プロセスを管理するために多くの測定機器が使われている。重要な機器のリスト作り、維持管理の手順、維持管理の間隔・タイミングなどを定める必要がある。なお、これらの維持管理が外部委託されていることがよくある。その場合にも自社の管理下に確実に置かれることが求められる。